◾️ゴミ箱0の花火大会って?
「今回はゴミ箱を一つも置かないんですってね」
ある関係者から、こう言われて絶句しました。
ゴミは来場者の「お持ち帰り」が原則らしいのです。ゴミ箱や集積場所を用意していたにもかかわらず、前回も駅に向かう道のいたる所に放置されていたゴミを目にしていた僕らには、とても現実的ではない気がしました。しかも、来場者数13万人と予想が出ていましたが、5年ぶりとなれば、それを上回ることは誰でも想像できますよね。大丈夫?
◾️どうする?僕らのビーチゴーミング
これを耳にしたのは、5年ぶりに開かれる「第76回鎌倉花火大会」が間近に迫る3連休初日の土曜のことでした。
おいおい、ちょっと待って!会場にゴミ置き場がないとしたら、僕たちが花火大会後にやろうとしている「ビーチゴーミング」で集めたゴミは、いったいどこへ持っていけばいいの? 大変だ!連休明けを待って、あわてて電話で市役所に問い合わせたのです。
◾️ビーチゴーミングって何?
「どういった活動ですか?」
「はい、ゴミ拾いではなく、みんなで花火を見て打ち上げが終わった瞬間から45Lのゴミ袋を広げて観客の皆さんからゴミを集めます。2017年から3年連続でやっています」
「それはそれは、ありがとうございます。それで、ゴミ袋はいくつぐらいになりますか?」
「たぶん40から50です」
「えっ!そんなに?」
◾️市役所さん、ありがとうございます
数が多かったので驚かれてしまいましたが、決して「だめです」ではなく、「なんとかしましょう」というスタンスで検討し、各部署で調整してくれました。ゴミ箱の設置はしないけれど、ゴミ袋50袋の置き場を確保してくれたのです。市役所さん、ありがとうございます。うれしい! よかった!
こうして、晴れて「カマゾウビーチゴーミング」ができることになり、当日を迎えました。
◾️5年ぶりの花火大会に人の波
まずは花火を見て楽しむのがカマゾウビーチゴーミングなので、13時半に場所取り先発隊が出かけて行きました。「由比ガ浜、打ち上げの台船正面を確保」の連絡が入ります。駅から海に向かう道には、例年よりもかなり人が多い印象です。集合時間の17時の砂浜も、すでに多くの人で埋まっていました。日が暮れてくると、もうシートを広げる場所もありません。こんなの初めて。
◾️一緒に「特等席」で花火を堪能、そして
カマゾウビーチゴーミングに集まったのは60人以上。カマゾウ会員だけでなく、この活動を知って地元はもちろん、横浜や川崎、東京などからも一般の方が参加してくれました。みんなでおそろいの水色Tシャツを着て海を向きます。先発隊のおかげで、最高の場所でゆっくりと花火を見ることができました。密集していて観客の距離感も近かったからか、いつも以上に盛り上がった印象です。
なんと予定より10分も早く終わってしまった花火に戸惑いながら、あわててあらかじめ決めていた10チームに分かれてゴミ袋を広げ、分別回収がスタートしました。
◾️若者たちのゴミに対する意識が高いことを再確認
「ご苦労さまです」「お疲れさまです」「ありがとうございます」「これもお願いします」・・・ゴミ袋を広げていると、若者たちが声をかけてくれます。僕らも「ありがとうございます」「また来年、きれいなビーチで会いましょう」と答えます。そして、今回も「分別しますか?」「ペットボトルです」「プラはここでいいですか」という声もあり、皆さんのゴミに対する意識が高いことを改めて実感しました。初参加の人も驚いたはず。今回も、ちょっとうれしい光景が広がっていました。
そうして集まったゴミ袋は(正確に数えてはいませんが)50袋以上に。メンバーの皆さん、ゴミを入れてくれた観客の皆さん、本当にありがとうございました&お疲れ様でした。
来年もみんなで楽しく花火を見て、気持ちよくゴミ集めができたらいいですね!
また、よろしくお願いします。
<ここからは気づいたことを書き加えますね>
◾️帰り道のゴミに驚がく
さて、来場者の皆さんのゴミに対する意識が高いことを実感したばかりなのに、帰り道にはいつも以上に、いや、かなりゴミが目につくのです。ちょっと残念。
住宅街の塀の前、植え込み、商店の閉まっているシャッターの前、なぜか自販機のそばには必ずといっていいほど大きなゴミの山ができています。
◾️ゴミ意識と現実のジレンマ
ゴミはちゃんと捨てたいと思ってゴミ箱を探すけど、ないじゃん。人混みの中、駅まで歩いて、わっ、駅前で1時間以上も並ぶんだ、そこから満員の電車やバスに乗って家までゴミを持ち帰るって、なかなかイメージできない。あっ、そこ、ちょっとゴミが捨ててある! ここでいいか、よくはないのは分かっているけどしょうがないよね、
だってちゃんと捨てたいと思ってるのに、ゴミ箱ないんだからさ(笑)。
来場者数13万人を大きく上回る16万人は、みんな悩んだはずです。
翌朝のビーチクリーンに集まった方々から、砂浜には思ったよりゴミがなかったという報告がありました。僕らの活動も少しは貢献したかもしれませんが、実は観客の皆さんは、とりあえずゴミを持って席を立ったはずです。だって、これだけの人が集まるイベントなのだから、会場の出口付近にはゴミを回収する場所が設けてあるはずだと思ったに違いありません。
◾️売るだけ売って閉店ガラガラ、の違和感
駅までの道を歩いて帰っていると、毎回気づくことがあります。往路では大声で呼び込みをしながら飲食物をバンバン売っていたお店が、全て閉まっています。露天もほぼ撤収しています。どういうこと? 売るだけ売ったらおしまいですか。経済が回れば、それでいいのでしょうか。
◾️ゴミ箱0は伝わっていなかった?
でも、そうか、僕らが知らなかった(発表していたのかもしれないけれど全く伝わっていなかった)ように、今回からゴミ箱は設置しないのを飲食物を販売する皆さんも知らなかったのかもしれませんね。
会場にゴミ箱を置かないのであれば、あらかじめゴミ箱がないことを前提とした対策をとっておく必要はなかったのでしょうか。販売側にきちんと周知して、例えば帰りに捨てていく用に店の前にゴミ箱を用意する(したらしたで大変なことになると思いますが)とか、せめて会場にゴミ箱ないよ、ちゃんと持ち帰ってねと呼びかけを行うとか。
そもそも「持ち帰り」の呼びかけだけ(これもどれだけ伝わっているのかなぁ)で、13万人がみんな持ち帰ると思いますか。現実的でないことを承知の上での「ゴミ箱0」に舵を切ったようにしか思えません。いかがでしょう。
◾️発想の転換で「鎌倉方式」なんて
全国的にも「持ち帰り」が推奨されているのは分かりますが、ただそれが鎌倉に当てはまる気も全くしません(通常の観光の様子を見ていても分かっているはず)。
そろそろ、来場者も、住民も、業者も、主催者も、みんなが幸せになる方法を考えてみませんか。
例えば、販売側からあらかじめ「ゴミ回収費用」を集める。出さなければ販売を許可しない(厳しー)。さらに、砂浜に降りる際に来場者から「ゴミ回収費用」と銘打った入場料を集める(ふざけんなって言われそう)。その費用で、業者さんにゴミ収集をお任せしてしまう(おー、シンプルで分かりやすーい)。
難しいかもしれないけれど、こんなふうにでもしなければ、たぶん永遠に片付かない問題だと思います。みんなが少しずつ負担して、プラス主催者側もしっかり努力して、ほかではやっていない鎌倉方式で、楽しい花火大会が実現できないでしょうか。
*フジロックフェスでは「世界一クリーンなフェス」を目指しています
5年ぶりの花火大会ビーチゴーミングで実感したのは、
多くの来場者はちゃんとゴミを捨てたい思っていること。
5年前と変わらず、ゴミに対する意識はみんな高いのです。
だから、会場にゴミ箱さえあれば、みんな分別して捨ててくれます。帰り道のゴミは劇的に減ると思いますよ。